IB生の「生の情報」IB経験しての後輩へのアドバイス
II. 「IB生のための大学受験」
2)海外大学出願
A)アメリカ大学 出願プロセスアメリカの大学に出願する手順はカナダ、イギリス、オーストラリアと比較すると格段に複雑です。出願するには根気と念入りな準備が必要ですが、その一歩で、他の国に比べ大学一年目の自由度(自分の興味のある分野を専攻できる)がかなり高いことが特徴です。
主なプロセスは以下に分けられます。
- Common Applicationについて
アメリカにある大学のほとんどが加盟しているアメリカ大学出願専用ウェブサイトをCommon Application(コモン・アプリケーション)と言います。「コモン=共通」、「アプリケーション=出願」という意味があり、このサイトに登録した情報で複数の大学に出願することが出来ます。
*全ての大学がCommon Applicationに所属しているとは限らないので、出願する予定の大学のホームページでチェックしてください。大学によっては独自の出願を課す場合があります。
オンライン出願なので、ID,パスワードの管理はしっかりと行いましょう。また、連絡用のメールアドレスは、出願用にまじめなものを作成しましょう。コモンアプリケーションも大学個別のアプリケーションも登録する際に、
• Username
• パスワード
を必ず手帳等に残しておきましょう。Usernameとパスワードは出願書類を完成させるため自分のページに行ったり、大学の出願書類審査状況を確認するために必要です。
コモン・アプリケーションは二つの部分からなっています。
a) 個人情報、成績、及び共通の小論文
b) 各大学の小論文
まず始めに、出願を希望する大学を出願リストに登録します。次に個人情報や成績などを入力していきます。
出願を始める前に情報を手元に用意しておくと、効率よく進めることが出来ます。
手間取らないように用意しておきたい情報として、以下が挙げられます:
- 高校の(英語)正式名称と住所、卒業予定日
- 高校のカウンセラー(海外進路指導の先生)の名前、メールアドレス、電話番号
- 高校で取った授業の数と名前、各授業一週間のコマ数(credit value=単位数として記入します)
- 課外活動の記録
- SAT, TOEFL, およびIB 予想点もしくは最終結果
- 両親が通った大学の正式名称と住所、入学した年、卒業した年、得た学位の数と名前
- アメリカ式で書かれた自宅の住所(番地・通り名・アパート番号、市町村の名称、県名、郵便番号、国名の順になります)
- 家族構成、両親の職業(数十種類からの選択式です)、勤務先の名称
課外活動の記録はかなり重要な項目です。10個まで記入することができ、週に何時間やっていたか、どのような活動だったのか、自分の役割は何だったのかを限られた字数の中で出来る限り具体的に書きます。 ほかの出願者との差をつけることが出来る部分なので、自分らしさを表現しましょう。部活動や習い事、ボランティア活動などを記入します。
注意:
コモン・アプリケーションでは「Fee Waiverを持っていますか」と聞かれる場所がいくつかあります。Fee Waiverとは低所得家庭に与えられる出願料免除システムのことです。日本では実施されていないので「いいえ」とお答えください。
(b)については2.で詳しく説明いたします。
- Essay (小論文)について
コモン・アプリケーションには共通小論文と各大学の小論文を提出する場所があります。共通小論文はいくつかある主題の中から一つを選択し、650英単語以内で書くものです。自分自身を見つめ直すような主題が多いので、比較的材料には困ることのない小論文だと言えます。しかしその分実体験とそれらを通じて学んだことや、自分とは何者かを分析して盛り込みます。出願書類の一般情報から推測できるありふれたものでは充分ではありません。出来る限り具体性を持たせ、自分のアイデンティティーを語ることがポイントです。
大学別小論文の主題は大学ホームページに載っていますが、コモン・アプリケーションでも見ることが出来ます。Writing Supplement という項目にありますので、大学名を出願リストに入れた後、ご確認ください。「なぜこの大学を選んだのか」「貴方はこの大学でどのような能力を発揮できるか」など基本的な質問から、「貴方の好きな本を紹介してください」「貴方がもっとも影響を受けた課外活動を紹介しなさい」のような質問もあります。また世界ランキングトップ10に入るような名門校では「貴方の好きなジョークを一つ、そのおもしろさを損なわないよう気をつけて説明しなさい(2014年シカゴ大学)」といった、単なる知識では書くことが難しい小論文も出題されます。問題を良く読み、先生にアドバイスを求めながら進めましょう。
- SAT, TOEFL, IB transcripts
アメリカの大学を受ける際、必要になる共通テストがSATです。SAT Reasoning test とSAT Subject test という二種類のテストがあります。Reasoning test は読解、作文、数学の三項目でテストされます。Subject test は数科目の中から二科目を選択します。Math II とChemistryが一般的ですが、Physicsで取ることも可能でしょう。
Ivy League(アメリカの名門私立大学8校。ハーバードやコロンビア大学など)はSAT Reasoning testに加え、Subject testsを受けていることが期待されます。難易度の高い大学を目指すなら必ず受けておくことをおすすめします。
TOEFL iBTは100点以上取れるとほぼ全ての大学に出願する事が出来ます。大学ごとにスコア要件が設けられているので調べておくと良いでしょう。TOEFLスコアを要求しない大学は、英語ネイティブレベルでも特に優れた英語力を期待していると考えておいた方がいいでしょう。
IB transcript とは高校三年生の11月に行われるディプロマ最終試験と内部評価を加味した最終の結果を指します。11月試験を受けた人たちについては、通常1月の第1週に結果通知があります。また、これはIBO(国際バカロレア機構)から大学へ直接送信することが可能です。アメリカでは1月1日が締め切りの大学も多いので、Predicted Score(予想点)を先に学校から送り、Final Score(最終結果)を後から送るという場合もあるでしょう。
SAT, TOEFL, IB transcript はそれぞれの機関から大学へ直送しなければなりません。「スコアを送る(send scores)」という項目が必ずどのホームページにもありますので、その手順に従ってください。手数料として千数百円~数千円程度かかりますが、テストを申し込む際に点数を送りたい大学をあらかじめ登録しておくと、「~校までは無料」となっています。
なお、SAT と TOEFLの詳しい勉強法については「外部テスト」の項目をご参照ください。
- 推薦書
コモン・アプリケーション用に二人からの推薦書提出が必要になります。大学個別にこれとは別に追加の推薦書が必要になる場合もありますので、確認しましょう。推薦書を書いていただく方は、早めに決めてお願いしておきましょう。海外大学用の推薦書の流儀に通じている方に、具体的な記述をふんだんに盛り込んだ内容のものを書いていただくといいですね。
- 各大学、各学部で指定する作品ポートフォリオなど
- リベラルアーツ大学
各種各様の自己活動の軌跡をまとめたポートフォリオを大学が指定する形で提出します。 - 美術・ジャーナリズム専攻用など
それまで作成した作品群を規定のデジタル様式で提出
大学の指定する題材の作品を、指定された様式で提出
- リベラルアーツ大学
- 必要な書類(銀行残高証明書や源泉徴収票など)を送る
コモン・アプリケーションと小論文を提出しテストの点数を送ったら、次は大学から指定された書類を送らなければなりません。必要な書類は大学ごとに異なりますが、共通するのは以下の通りです:
- 銀行残高証明書
- 扶養証明書
- 源泉徴収票
- 源泉徴収票の訳文
このうち源泉徴収票の訳文は海外進路指導の先生に聞くのがよいでしょう。
インターネットでPDFファイルに変換した書類を受け付ける大学と、郵送のみで受け付けている大学の二種類あります。しっかりと大学のホームページを読むことが慌てないコツです。郵送する際にはEMSを使い、追跡番号を控えておきましょう。1通につき¥1200程度で送ることが出来ます。大学によっては、郵便物用の住所と宅配書類用住所を違えて設定しているところがありますので気をつけましょう。
以上が出願の主な手順となります。かなり複雑ですので、見落としのないよう気をつけて出願することが大切です。
大学によっては、各高校からの成績証明書の直接送付を受け付けず、指定する「高校成績再計算センター」に送付して、そこから大学へ送付されるように手配することを指示するところがあります。1通について100ドルほどかかり、二週間ほど時間がかかりますので、気をつけましょう。
また、一般的に北米大学は、中学3年からの成績証明書の提出を求めます。この間に複数の学校に通学していた場合には、それら全ての学校からの成績証明書を厳封で取り寄せて、最終卒業予定の学校から、その他の書類とあわせて送付するのがいいでしょう。